「実務経験」を重視する。見地からの意見として、「建てた住宅のうち数軒を見学して、居住者の感想が好評ならば大丈夫だ」というはなしがある。しかし、次の二つの問題がある。第一に、本質的な問題として「失敗作」、つまり建築主の評判がよくなかったものは、自分の代表作としては見せない。結局、評判がいい建物だけを見せることになるが、はたしてこれで建築士選びの参考になるのか。第二は、住宅のプライベート性である。建築設計においては建築主の夫婦仲、親子仲、姑関係などの個々の家族のプライバシーが深く組み込まれる。
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この中には建築主にとって秘密にしておきたいことが多々含まれている。本来なら、建築士には高度な守秘義務があると考えられる。ところが、建築士には医師や弁護士のように刑罰を伴う法的な守秘義務がない。たとえば、あなたがある設計事務所を訪れたとする。建築士が以前に設計した住宅の図面を持ち出し、「これは私が以前設計した住宅です。主寝室の前にクローゼットを付室として配置し、ここを通らなければ主寝室へは入れません。いわばウォークースルー・クローゼットです。実は、この家の若夫婦は性生活で夫婦とも大きい声を出すんだそうです。そこで廊下との遮音性を十分に保つために、こういう設計にしたんです。どうですか、いいアイデアでしょう。