カントによると、人間は教育によってはじめて人間になることができるのであるが、教育を受けた者が次世代の子どもに対し教育をすることになるのであるから、教育とは一世代のみで終わるものではなく、多くの世代を経なければならないものなのである。つまり、教育とは、その場限り、その時代限りのものではなく、人類全体という見地に立って、綿々と続く将来にわたる人間の歴史を見据えて教育行政をしなければならないというものなのである。カントが教育計画を立てる人々に対して述べている教育技法の原理とは、「子どもが人類の現在の状態だけに適応するようにではなく、むしろ人類の将来的に可能なより善い状態に適応するように教育されるべきである。換言すれば、人間性の理念およびその使命全体にふさわしく教育されるべきである」(228頁)というものである。このようにカントの教育論は、一個人の教育と人類とを視座に置いた教育とが平行してなされ、しかも相互に絡み合ったものでなければならないというものである。時と場所を越えた〈人類の教育〉という歴史的な共同作業を営むという大きな展望のもと、個人の教育の目的を立て、それを確立することにより、人類の将来への展望が開けるということになるのである。このような哲学者としてのカントの大局に立った教育論は、これからも省みるものが多くあるのではないだろうか。
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